個人投資家とは?投資の特徴や企業との関係、資金調達で知っておきたいポイントを解説

2026年9月1日

企業が事業を成長させるためには、安定した資金を確保することが欠かせません。特にスタートアップやベンチャー企業では、設備投資や人材採用、新規事業の開発などに多額の資金が必要になることがあり、金融機関からの融資だけでなく、投資家から出資を受ける方法も重要な選択肢となります。

その中でも「個人投資家」は、企業にとって重要な資金調達先の一つです。個人投資家は、自分自身の資金を使って企業や株式などに投資する人を指し、上場企業への株式投資だけでなく、創業間もないスタートアップへの出資を行うケースもあります。

企業側から見ると、個人投資家から出資を受けることで、融資とは異なり原則として返済義務のない資金を調達できる可能性があります。また、個人投資家によっては資金を提供するだけでなく、これまでの事業経験や人脈、経営ノウハウなどを活用して企業を支援してくれる場合もあります。

一方で、個人投資家から資金調達を行う場合には、株式の希薄化や経営への影響、投資条件などについて慎重に検討する必要があります。

この記事では、個人投資家の基本的な意味や特徴から、企業が個人投資家から資金調達するメリット・デメリット、投資家から評価されるポイント、出資を受けるまでの流れなどについて詳しく解説します。

個人投資家とは

個人投資家とは、企業や金融商品などに対して、自分自身の資金を使って投資を行う個人のことです。

一般的には、証券会社を通じて株式や投資信託などを購入する個人をイメージすることが多いでしょう。

しかし、個人投資家の活動範囲は上場企業への株式投資だけではありません。創業間もないスタートアップやベンチャー企業に対して出資する個人もいます。

こうした個人投資家の中には、企業の将来的な成長性に期待して出資する人もいれば、特定の業界や事業領域に関する知識や経験を持ち、企業の成長を支援する目的で投資する人もいます。

企業にとっては、個人投資家から出資を受けることで、銀行融資とは異なる形で資金を確保できる可能性があります。

個人投資家と機関投資家の違い

投資家には、個人投資家だけでなく機関投資家も存在します。

個人投資家は、自分自身の資産を使って投資する個人です。一方、機関投資家は、銀行や保険会社、年金基金、投資信託会社など、組織として大きな資金を運用する投資家を指します。

両者の大きな違いは、投資する資金の規模や意思決定の仕組みです。

個人投資家の場合、本人が投資判断を行うため、比較的柔軟に判断できるケースがあります。

特にスタートアップへの投資では、投資判断を行う個人の経験や価値観が大きく反映されることがあります。

一方、機関投資家では、組織として投資方針やリスク管理の基準が設定されていることが多く、投資判断に複数の審査や承認が必要になる場合があります。

企業が資金調達を行う場合には、それぞれの特徴を理解したうえで、自社に適した投資家を探すことが重要です。

個人投資家にはどのような人がいるのか

個人投資家と一口にいっても、その投資スタイルや目的はさまざまです。

上場企業の株式を中心に投資する人もいれば、スタートアップやベンチャー企業への投資を専門的に行う人もいます。

また、自身が会社を経営している経営者が、他社へ投資するケースもあります。

こうした経営者は、自身の事業経験を活かして投資先企業を支援できる可能性があります。

たとえば、営業経験が豊富な経営者であれば営業面でアドバイスを行ったり、業界内の人脈を紹介したりすることがあります。

また、ITやマーケティングなど特定の分野に詳しい個人投資家であれば、専門知識を活用して投資先を支援するケースもあります。

そのため、企業が個人投資家を探す際には、単純に「資金を持っている人」を探すだけでなく、自社の事業と相性が良い人物を探すことも重要です。

個人投資家が企業に投資する理由

個人投資家が企業へ投資する理由はさまざまです。

代表的なのは、投資先企業が成長した場合に大きなリターンを得られる可能性があることです。

特に創業初期の企業に投資する場合、将来的に企業価値が大きく上昇すれば、投資した株式の価値が高まる可能性があります。

一方で、スタートアップへの投資は事業が計画通りに成長しないリスクも高く、投資した資金を回収できない可能性もあります。

そのため、個人投資家は企業の事業内容や市場規模、経営チーム、成長戦略などを確認したうえで投資を判断します。

また、金銭的なリターンだけでなく、「将来性のある事業を応援したい」「自分の経験を活かして企業を成長させたい」といった理由から投資する人もいます。

個人投資家から資金調達するメリット

個人投資家から資金調達を行う大きなメリットの一つは、融資とは異なり、原則として借入金のような返済義務がないことです。

銀行融資では、借りた資金を契約に従って返済する必要があります。毎月の返済額や利息が発生するため、事業のキャッシュフローに負担を与える可能性があります。

一方、株式を発行して個人投資家から出資を受ける場合、通常の融資のように元本を定期的に返済する必要はありません。

そのため、まだ十分な利益を確保できていないスタートアップにとっても、成長のための資金を確保する方法となる可能性があります。

また、個人投資家から資金だけでなく、経営に関する知識や人脈を得られる可能性があることもメリットです。

個人投資家から資金調達するデメリット

個人投資家からの資金調達には、注意すべき点もあります。

株式を発行して出資を受ける場合、既存株主の持株比率が低下する可能性があります。

たとえば、創業者が100%の株式を保有している企業が新たに株式を発行して投資家へ渡せば、創業者の持株比率は100%から低下します。

投資家が株主になることで、会社の意思決定や経営方針に影響が生じる可能性もあります。

また、投資家との関係を長期的に維持する必要があるため、単に資金を受け取れば終わりというわけではありません。

資金調達を行う前には、投資家がどの程度経営に関与するのか、どのような権利を持つのかなどを確認することが重要です。

個人投資家とエンジェル投資家の違い

個人投資家と関連してよく使われる言葉に「エンジェル投資家」があります。

エンジェル投資家とは、創業初期のスタートアップなどに対して個人で出資する投資家を指します。

そのため、エンジェル投資家は個人投資家の一種と考えることができます。

ただし、すべての個人投資家がエンジェル投資家というわけではありません。

個人投資家の中には、上場株式への投資を中心に行っている人や、不動産などに投資している人もいます。

一方、エンジェル投資家は、創業初期の企業に投資し、企業の成長を支援するケースが多いという特徴があります。

企業がスタートアップの段階で資金調達を行う場合には、エンジェル投資家が有力な候補になる可能性があります。

個人投資家からの資金調達と融資の違い

個人投資家から出資を受ける方法と、金融機関から融資を受ける方法には大きな違いがあります。

融資の場合は、借りた資金を返済する必要があります。

その代わり、通常は株式を渡す必要がないため、経営権や既存株主の持株比率への影響を抑えられます。

一方、個人投資家から株式の出資を受ける場合は、原則として融資のような返済義務はありません。

ただし、株式を発行することで既存株主の持株比率が低下する可能性があります。

どちらが優れているというものではなく、企業の成長段階や財務状況、資金使途、返済能力などを考慮して選ぶ必要があります。

個人投資家が企業を見るポイント

個人投資家がスタートアップへ投資する場合、さまざまな要素を確認します。

まず重要なのが事業内容です。

どのような商品やサービスを提供しているのか、どの顧客を対象としているのか、どのような課題を解決する事業なのかを明確に説明する必要があります。

市場規模も重要なポイントです。

どれだけ優れた商品であっても、市場そのものが小さければ大きな成長を実現することは難しくなります。

また、競合他社との違いも確認されます。

「なぜ顧客が自社の商品を選ぶのか」「競合企業が同じサービスを提供した場合でも成長できるのか」といった点を説明できるようにしておくことが重要です。

経営者や経営チームも個人投資家の評価対象になる

スタートアップへの投資では、事業そのものだけでなく、経営者や経営チームも重要な評価対象になります。

創業初期の企業では、売上や利益などの実績が十分に蓄積されていない場合があります。

そのため、経営者がどのような経験や知識を持っているのか、事業を実現する能力があるのかといった点が重視されることがあります。

また、一人の経営者だけでなく、営業、開発、財務、マーケティングなどを担うチームが整っているかどうかも重要です。

企業が成長するためには、事業アイデアだけでなく、それを実行できる組織が必要だからです。

個人投資家に事業計画を説明する際のポイント

個人投資家から出資を受ける場合、自社の事業計画をわかりやすく説明することが重要です。

事業計画では、現在の事業内容だけでなく、今後どのように成長していくのかを示します。

たとえば、今後の顧客獲得数、売上目標、新規サービスの展開、採用計画などを具体的に示すと、投資家が将来像をイメージしやすくなります。

ただし、過度に楽観的な数字を設定することは避ける必要があります。

投資家から質問されたときに、なぜその数字を達成できると考えているのかを説明できることが重要です。

市場データや過去の実績など、計画の根拠を示せるように準備しておきましょう。

個人投資家へのプレゼンテーションで重要なこと

個人投資家から資金調達する場合、プレゼンテーションを行う機会があります。

その際には、事業内容をただ説明するだけではなく、「なぜこの事業を行うのか」「どのような課題を解決するのか」「将来的にどの程度の事業規模を目指すのか」を明確に伝えることが重要です。

特に創業初期では、現在の売上規模だけでは企業の可能性を十分に伝えられない場合があります。

そのため、事業の将来性を具体的なデータや計画を使って説明する必要があります。

また、調達した資金を何に使うのかも明確にしておきましょう。

人材採用、プロダクト開発、広告宣伝、設備投資など、資金使途を具体的に説明することで、投資家が出資後の成長イメージを持ちやすくなります。

個人投資家から資金調達するまでの流れ

個人投資家から出資を受ける場合、まず自社に適した投資家を探します。

投資家を探す際には、投資実績や得意な業界、投資金額などを確認し、自社との相性を考えることが重要です。

投資家候補が見つかったら、事業内容や資金調達の目的を説明し、投資条件について交渉します。

その後、投資家による事業内容や財務状況などの確認が行われ、条件に合意すれば契約を締結します。

契約後は、投資家から資金が払い込まれ、企業側では株式の発行など必要な手続きを行います。

実際の手続きや契約内容は、資金調達の方法や企業の状況によって異なるため、専門家へ相談しながら進めることも重要です。

個人投資家を探す方法

個人投資家を探す方法にはいくつかあります。

スタートアップ向けのイベントや交流会などに参加し、投資家と直接つながる方法があります。

また、起業家や経営者などから紹介してもらう方法もあります。

すでに事業を行っている場合は、取引先や業界関係者から投資家につながるケースも考えられます。

近年では、スタートアップと投資家をつなぐサービスなども存在するため、こうしたサービスを活用する方法もあります。

ただし、投資家を探す際には、資金を提供してくれるかだけでなく、自社の事業方針や経営者との相性も確認することが重要です。

個人投資家との相性を確認することが重要

個人投資家から資金調達する場合、投資金額だけを基準に投資家を選ぶことはおすすめできません。

企業と投資家は、資金調達後も長期的な関係を築くことになる可能性があります。

投資家が自社の事業についてどの程度理解しているのか、どのような支援を提供できるのか、経営への関与をどの程度希望しているのかなどを確認しておきましょう。

たとえば、営業力を強化したい企業であれば、営業経験や業界内の人脈を持つ投資家が適している可能性があります。

一方、海外展開を目指している企業なら、海外市場に詳しい投資家が役立つ場合があります。

このように、個人投資家を「資金の提供者」としてだけではなく、「成長を支援するパートナー」として考えることが重要です。

個人投資家から出資を受ける際の株式の希薄化

個人投資家から株式の出資を受ける場合には、希薄化について理解しておく必要があります。

希薄化とは、新たに株式を発行することで、既存株主が保有する株式の割合が低下することです。

たとえば、創業者が100%の株式を持つ会社が、新たに投資家へ20%相当の株式を発行した場合、創業者の持株比率は80%になります。

企業にとって資金調達は成長のために重要ですが、株式を発行するほど既存株主の持株比率は低下します。

そのため、必要な資金額と企業価値を考慮しながら、どの程度の株式を投資家へ渡すのかを慎重に検討する必要があります。

企業価値と個人投資家からの資金調達

個人投資家から株式による出資を受ける場合、企業価値も重要になります。

企業価値が高く評価されれば、同じ金額を調達する場合でも投資家へ渡す株式の割合を抑えられる可能性があります。

たとえば、資金調達前の企業価値が4億円の会社が1億円を調達する場合と、企業価値が9億円の会社が1億円を調達する場合では、投資家が取得する株式の割合は異なります。

そのため、企業側は自社の市場規模や成長率、売上、顧客基盤、競争優位性などを整理し、企業価値の根拠を説明できるようにしておくことが重要です。

ただし、企業価値を高く設定すれば必ず良いわけではありません。

実態以上に高い企業価値を設定すると、次回の資金調達で評価額を維持できない可能性があります。

長期的な資本政策を考え、現実的な企業価値で交渉することが重要です。

個人投資家から資金調達する際の注意点

個人投資家から出資を受ける際には、契約内容を十分に確認する必要があります。

出資金額だけでなく、発行する株式の種類や株式数、投資家の権利、経営への関与などについて確認しましょう。

また、複数の投資家から出資を受ける場合には、株主構成が複雑になる可能性があります。

将来的に追加の資金調達を行う場合や、M&Aなどのイグジットを目指す場合にも影響する可能性があるため、長期的な視点から株主構成を考えることが重要です。

契約条件について不明な点がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することも検討しましょう。

個人投資家からの資金調達が向いている企業

個人投資家からの資金調達は、特に創業初期や成長段階にある企業と相性が良い場合があります。

まだ利益が十分に出ておらず、金融機関からの融資を受けることが難しい企業でも、将来性が評価されれば出資を受けられる可能性があります。

また、事業経験や人脈など、資金以外の支援を必要としている企業にも向いている可能性があります。

たとえば、新しい市場へ参入する企業が、その業界に詳しい個人投資家から出資を受ければ、資金だけでなく業界知識や人脈を得られる可能性があります。

ただし、株式を渡すことによる経営上の影響もあるため、企業の成長戦略や株主構成を踏まえて判断することが重要です。

個人投資家からの資金調達が向いていないケース

すべての企業に個人投資家からの資金調達が適しているわけではありません。

たとえば、安定した利益を確保しており、十分な返済能力がある企業であれば、株式を発行するよりも融資を利用したほうが経営権への影響を抑えられる場合があります。

また、外部の株主を増やしたくない経営者にとっても、エクイティファイナンスは慎重に検討する必要があります。

資金調達を行う際には、個人投資家からの出資だけに限定せず、銀行融資、ファクタリング、補助金・助成金なども含めて比較することが重要です。

個人投資家との関係を資金調達後も維持する

個人投資家から出資を受けた後は、投資家との関係を適切に維持することが重要です。

資金調達後の事業状況について、必要に応じて報告を行いましょう。

特に、計画通りに進んでいない場合でも、問題を隠すのではなく、状況や今後の対応を説明することが重要です。

投資家から信頼を得られれば、次回の資金調達時に追加出資を受けられる可能性もあります。

また、投資家が持っている人脈や知識を活用することで、新たな取引先や人材などにつながる可能性もあります。

個人投資家に選ばれる企業になるために

個人投資家から資金調達するためには、投資家にとって魅力のある企業になることが重要です。

そのためには、事業内容を明確にするとともに、今後の成長戦略を具体化する必要があります。

現在の売上規模が小さくても、なぜ市場が拡大すると考えているのか、なぜ自社がその市場で勝てるのかを説明できれば、将来性を伝えやすくなります。

また、経営者自身が事業について深く理解し、質問に対して具体的に回答できることも重要です。

投資家は単なる事業アイデアだけでなく、経営者がその事業を実現できる人物なのかという点も確認します。

個人投資家に関するよくある質問

個人投資家とはどのような人ですか

個人投資家とは、自分自身の資金を使って企業や株式などに投資する個人のことです。

上場企業の株式へ投資する人だけでなく、スタートアップやベンチャー企業に出資する人も個人投資家に含まれます。

個人投資家とエンジェル投資家は同じですか

完全に同じ意味ではありません。

エンジェル投資家は、個人投資家の中でも特に創業初期のスタートアップなどへ投資する人を指すことが一般的です。

そのため、エンジェル投資家は個人投資家の一種と考えることができます。

個人投資家から資金調達すると返済は必要ですか

株式を発行して出資を受ける場合、融資のような元本返済は原則として必要ありません。

ただし、出資者は株主となるため、株式の権利や株主構成などに影響が生じる可能性があります。

資金調達の条件については、契約内容を十分に確認する必要があります。

個人投資家から資金調達するメリットは何ですか

代表的なメリットは、融資とは異なり原則として返済義務のない資金を調達できることです。

また、投資家によっては資金だけでなく、経営経験、人脈、業界知識などの支援を受けられる可能性があります。

個人投資家から資金調達すると株式はどうなりますか

株式を発行して出資を受ける場合、投資家に新しい株式を渡すことになります。

その結果、既存株主の持株比率が低下する可能性があります。

どの程度の株式を発行するのかは、企業価値や調達額などを踏まえて慎重に検討する必要があります。

まとめ

個人投資家とは、自分自身の資金を使って企業や株式などに投資する個人のことです。上場企業への株式投資だけでなく、スタートアップやベンチャー企業へ出資する個人も存在します。

企業にとって個人投資家は、銀行融資とは異なる資金調達先として重要な存在です。株式を発行して出資を受ける場合、融資のような原則的な返済義務がないため、創業初期など十分な利益を確保できていない企業でも資金を調達できる可能性があります。

さらに、個人投資家によっては、資金を提供するだけでなく、経営経験や業界知識、人脈などを活用して投資先企業を支援してくれる場合があります。そのため、個人投資家を探す際には、出資金額だけでなく、自社の事業との相性も確認することが大切です。

一方で、個人投資家から株式による出資を受ける場合には、既存株主の持株比率が低下する希薄化に注意する必要があります。また、投資家が株主になることで、経営方針や意思決定に影響が生じる可能性もあります。

資金調達を行う際には、企業価値や調達額、発行する株式の割合などを慎重に検討し、将来的な株主構成まで考えることが重要です。

また、個人投資家からの資金調達だけを選択肢にするのではなく、銀行融資、ファクタリング、補助金・助成金など、さまざまな資金調達方法を比較することも大切です。

個人投資家からの出資は、単に資金を得るための手段ではありません。企業の成長を支援してくれるパートナーを得る機会にもなります。

自社の事業内容や成長ステージに合った個人投資家を見つけ、資金面だけでなく経営面でも良好な関係を築くことができれば、資金調達を企業成長につなげられる可能性があります。