投資ラウンドの基礎知識を解説!スタートアップの資金調達と各ラウンドの特徴
2026年9月1日
スタートアップやベンチャー企業の資金調達について調べていると、「シード」「シリーズA」「シリーズB」といった言葉を目にすることがあります。これらは、企業が事業を成長させていく過程で、どの段階にあり、どのような目的で資金調達を行うのかを示す「投資ラウンド」と深く関係しています。
投資ラウンドは、スタートアップが成長段階に応じて資金を調達する際に使われる考え方です。創業直後の企業と、すでにサービスを確立して売上を伸ばしている企業では、必要となる資金の規模や使い道、投資家から求められる事業計画などが大きく異なります。
そのため、投資ラウンドを理解することは、スタートアップの資金調達を考えるうえで重要です。
本記事では、投資ラウンドの意味や種類、それぞれの段階における特徴について詳しく解説します。さらに、投資ラウンドごとの資金調達の目的や投資家の違い、企業価値との関係、資金調達を成功させるためのポイントについても紹介します。
投資ラウンドとは
投資ラウンドとは、スタートアップやベンチャー企業が成長段階に応じて行う資金調達の区分を表す言葉です。
一般的には、企業の成長段階に応じて「シード」「シリーズA」「シリーズB」「シリーズC」などと呼ばれます。
ただし、投資ラウンドには法律上の明確な定義があるわけではありません。企業や投資家、ベンチャーキャピタルなどによって呼び方や基準が異なる場合があります。
たとえば、創業直後でまだサービスを本格的に開始していない企業は「シードラウンド」と呼ばれる段階にあるとされることがあります。
その後、サービスを市場に投入して事業モデルを確立し、事業を拡大する段階になると「シリーズA」「シリーズB」などへ進んでいきます。
つまり、投資ラウンドは単なる資金調達の回数を示すものではなく、「企業が現在どのような成長段階にあるのか」を理解するための目安としても利用されています。
投資ラウンドが重要な理由
投資ラウンドが重要なのは、スタートアップの成長段階によって必要な資金や投資家が異なるためです。
創業直後の企業は、事業を開始するための設備や人材、開発費などが必要になります。一方、サービスが成長した企業では、営業人員の増強や広告宣伝、海外展開、新しい拠点の開設など、より大規模な資金が必要になる場合があります。
また、企業の成長にともなって、投資家が確認するポイントも変化します。
創業初期では、経営者の経験やアイデア、市場の可能性などが重視されることがあります。
一方、事業が成長した段階では、売上高や利益、顧客数、継続率、キャッシュフローなど、実際の事業実績がより重要になります。
そのため、投資ラウンドを理解することで、企業がどのような段階で、何を目的として資金調達を行っているのかを把握しやすくなります。
投資ラウンドの基本的な種類
投資ラウンドは、一般的に「シード」「シリーズA」「シリーズB」「シリーズC」などに分けられます。
ただし、すべての企業が同じ順番で資金調達を行うわけではありません。
企業によってはシードラウンドを飛ばしてシリーズAから資金調達を開始することもあります。また、シリーズC以降も「シリーズD」「シリーズE」などと続く場合があります。
さらに、企業の成長段階を表す名称として「プレシード」という言葉が使われるケースもあります。
重要なのは、ラウンド名そのものを絶対的な基準として考えるのではなく、その企業がどの程度事業を確立しており、調達した資金を何に使うのかを確認することです。
プレシードラウンドとは
プレシードラウンドは、スタートアップが本格的に事業を立ち上げる前後の非常に初期段階を指す言葉です。
まだ具体的なサービスが完成していなかったり、売上が発生していなかったりするケースもあります。
この段階では、事業アイデアを具体化したり、プロトタイプを開発したり、顧客ニーズを調査したりするための資金が必要になります。
投資家から見ると、事業実績がほとんどないため、一般的な企業への投資と比べて不確実性が高い段階です。
そのため、創業者自身の経験や専門性、事業アイデア、市場の成長性、解決しようとしている課題などが重要な判断材料になることがあります。
プレシードでは、創業者の自己資金や知人・友人からの出資、エンジェル投資家、創業初期を支援するベンチャーキャピタルなどから資金を調達するケースがあります。
シードラウンドとは
シードラウンドは、スタートアップが事業の基礎を構築する初期段階を指します。
「シード」という名称には、これから大きく成長する企業の「種」という意味合いがあります。
この段階では、サービスや商品の開発、市場調査、顧客の獲得、初期メンバーの採用などに資金を使うケースが多くなります。
まだ安定した売上が発生していない企業も多いため、資金調達では将来的な市場規模や事業の成長可能性などが重要になります。
シードラウンドの投資家としては、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルなどが挙げられます。
また、創業者自身の資金や金融機関からの融資、補助金などを組み合わせて事業を立ち上げるケースもあります。
シリーズAとは
シリーズAは、スタートアップが事業モデルを確立し、本格的な成長を目指す段階で行われる資金調達です。
シード段階では、事業そのものを成立させることが大きな目的になります。
一方、シリーズAでは、すでに一定のサービスや商品が存在し、顧客からの反応や売上などの実績が出始めているケースが多くなります。
調達した資金は、営業・マーケティングの強化、採用、サービス開発、組織体制の整備などに使われることがあります。
シリーズAでは、単に「面白そうなアイデア」であるだけではなく、実際に顧客が存在するのか、どの程度成長できるのか、事業モデルが成立しているのかといった点が重視されます。
そのため、シードラウンドよりも具体的な事業計画や実績を投資家に示すことが重要になります。
シリーズBとは
シリーズBは、事業モデルがある程度確立し、さらなる事業拡大を目指す段階で行われる資金調達です。
シリーズAで事業の成長可能性を検証した後、シリーズBではその事業を大きく成長させることが目的になります。
たとえば、営業チームの大幅な拡大、広告宣伝への投資、全国展開、海外進出、新規サービスの開発などに資金を投入することがあります。
また、企業規模が大きくなるため、管理部門や人事制度、内部管理体制などの整備も重要になります。
シリーズBでは、これまでの売上成長率や顧客数、利益率などの具体的な実績が、投資家にとって重要な判断材料になります。
シリーズCとは
シリーズCは、すでに事業が大きく成長している企業が、さらなる拡大を目指して行う資金調達の段階です。
シリーズBまでに事業モデルを確立し、売上や顧客基盤を拡大した企業が、さらに大きな市場を狙うために資金を調達するケースがあります。
調達資金の使い道としては、海外進出、大規模なマーケティング、新規事業、M&Aなどが考えられます。
また、IPOを目指す企業が上場準備のために資金調達を行うこともあります。
この段階では、創業初期と比べて企業規模が大きくなっているため、投資家もより詳細な財務情報や事業計画、経営体制などを確認します。
シリーズD以降の投資ラウンド
シリーズCの後も、企業がさらに資金調達を行う場合には「シリーズD」「シリーズE」などと呼ばれることがあります。
ただし、シリーズD以降になると、企業によって資金調達の目的や成長段階が大きく異なります。
すでに大規模な事業基盤を持っている企業が、海外市場への進出や大型M&A、新規事業などのために追加資金を調達する場合もあります。
また、IPO前の最終的な成長投資を目的として、大型の資金調達を行うケースもあります。
そのため、シリーズDだから必ずこの状態、というような明確な基準が存在するわけではありません。
投資ラウンドと資金調達額の関係
一般的には、投資ラウンドが進むほど調達額が大きくなる傾向があります。
これは、企業が成長するにつれて事業規模が拡大し、必要となる資金も増えるためです。
シード段階では、サービス開発や初期の採用などに必要な比較的小規模な資金を調達するケースが多くなります。
シリーズAでは、サービスを成長させるための営業やマーケティングなどに資金を投入するため、調達額が大きくなる場合があります。
シリーズB以降では、全国展開や海外進出、大規模な採用、M&Aなどに資金を使う可能性があるため、さらに大きな資金調達になることがあります。
ただし、投資ラウンドごとの調達額に統一された基準はありません。
業種によっても必要資金は大きく異なります。ソフトウェア企業と製造業では設備投資の規模が異なるため、同じシリーズAでも必要な資金額は大きく変わる可能性があります。
投資ラウンドと企業価値の関係
投資ラウンドを理解するうえでは、企業価値も重要な要素です。
スタートアップが資金調達を行う場合、投資家は企業に出資する代わりに株式を取得することがあります。
たとえば、企業価値が10億円と評価され、投資家が2億円を出資した場合、単純化すると投資後の企業価値は12億円となります。
このとき、投資家が取得する株式の割合は、資金調達前後の企業価値などを基準として決まります。
企業が成長して企業価値が高くなれば、同じ金額を調達しても既存株主が手放す株式の割合を抑えられる可能性があります。
そのため、スタートアップにとっては、資金調達を行うタイミングと企業価値の関係が重要になります。
投資ラウンドと株式の希薄化
投資ラウンドを重ねると、企業は新たな投資家に株式を発行することがあります。
新株を発行すると、既存株主の持株比率が低下する可能性があります。これを株式の希薄化といいます。
たとえば、創業者が会社の株式を100%保有している状態で、投資家に20%相当の新株を発行した場合、創業者の持株比率は低下します。
その後、シリーズBやシリーズCなどで追加の資金調達を行えば、さらに新株が発行され、既存株主の持株比率が低下する可能性があります。
ただし、希薄化は必ずしも悪いことではありません。
新たな資金を使って企業価値を大きく高められれば、創業者の持株比率が低下しても、保有株式の価値自体が上昇する可能性があります。
重要なのは、どの程度の株式を渡して、どれだけの資金を調達し、その資金によってどの程度の成長を目指すのかを考えることです。
投資ラウンドで投資家が確認するポイント
投資家は、投資ラウンドによって異なるポイントを確認します。
創業初期では、経営者の能力や事業アイデア、市場の成長性などが重視される傾向があります。
事業が成長してシリーズA以降に進むと、売上高や顧客数、利用者数、継続率など、具体的な事業実績が重要になります。
さらにシリーズBやシリーズC以降になると、利益率やキャッシュフロー、組織体制、競合他社との競争力なども重要になります。
つまり、投資ラウンドが進むほど、「将来成長しそうな企業」から「実際に成長している企業」であることを示す必要性が高くなると考えられます。
投資ラウンドで活用される資金調達方法
投資ラウンドで資金調達を行う方法は、株式の発行だけではありません。
代表的な方法として、第三者割当増資があります。
第三者割当増資は、特定の投資家や企業などに新株を発行し、その対価として資金を受け取る方法です。
また、株式を取得できる権利を付与する新株予約権を活用した資金調達が行われることもあります。
創業初期には、融資や補助金、助成金などを組み合わせるケースもあります。
スタートアップにとっては、資金調達方法によって株式の希薄化や返済負担などが変わるため、単に調達額だけでなく、それぞれの特徴を比較することが重要です。
投資ラウンドごとに資金の使い道は変わる
投資ラウンドが変わると、調達資金の使い道も変化します。
プレシードやシードでは、プロダクト開発や市場調査など、事業の土台を作るために資金を使うケースが多くなります。
シリーズAでは、サービスを市場に広げるための営業やマーケティング、人材採用などへの投資が増える傾向があります。
シリーズB以降では、事業規模をさらに拡大するために、営業拠点の増設や海外進出、新規事業、M&Aなどに資金を投入するケースがあります。
したがって、投資家に資金調達を依頼する際には、「いくら必要か」だけではなく、「なぜ必要なのか」「その資金によって何を実現するのか」を明確にすることが重要です。
投資ラウンドで資金調達を成功させるポイント
投資ラウンドで資金調達を成功させるためには、企業の成長段階に合った資金調達計画を立てることが重要です。
まず、今後どの程度の資金が必要になるのかを中長期的に考えます。
目の前の資金不足だけを解消しようとすると、短期間で再び資金調達が必要になる可能性があります。
また、調達資金を使ってどのような成果を出すのかを明確にすることも大切です。
たとえば、「営業担当者を10人採用して顧客数を2倍にする」「新サービスを開発して新たな収益源を作る」など、具体的な目標を設定します。
投資家にとっては、資金を提供した後に企業がどのように成長するのかを判断する材料になります。
投資家選びも重要になる
スタートアップが資金調達を行う場合、調達額だけで投資家を選ぶのはおすすめできません。
投資家によって、提供できる経営支援や人脈、業界知識などが異なるためです。
たとえば、IT業界に強いベンチャーキャピタルから出資を受ければ、事業開発や人材採用などについて支援を受けられる可能性があります。
また、大手企業から出資を受けることで、その企業の販売網や技術などを活用できる場合もあります。
一方、投資家によっては経営方針について強い影響を与える可能性もあるため、出資を受ける前に投資契約の内容や経営への関与の範囲などを確認することが重要です。
投資ラウンドとIPOの関係
スタートアップのなかには、将来的なIPOを目指して投資ラウンドを重ねる企業もあります。
IPOとは、未上場企業が株式を証券取引所に上場し、一般の投資家が株式を売買できるようにすることです。
投資家にとっては、IPOによって保有株式を市場で売却できるようになる可能性があるため、投資先企業のIPOは重要なイベントになります。
企業側もIPOに向けて、売上や利益を成長させるだけでなく、内部管理体制やガバナンス、財務管理などを整備する必要があります。
ただし、すべてのスタートアップがIPOを目指すわけではありません。
M&Aによる事業売却や、他社との統合など、別の方法で投資家が投資回収を目指すケースもあります。
投資ラウンドを確認するときの注意点
投資ラウンドの名称だけで企業の成長性を判断するのは避ける必要があります。
「シリーズBだから優良企業」「シリーズCだから安全」というように、ラウンド名だけで企業の価値を判断することはできません。
投資ラウンドには明確な統一基準がないため、同じシリーズAでも企業によって事業規模や調達額、成長段階が異なります。
企業を評価する場合は、売上成長率、顧客数、利益、資金調達額、企業価値、競合環境などを総合的に確認することが重要です。
また、資金調達後にどのような事業計画を実行するのかについても確認しましょう。
投資ラウンドを理解して資金調達を計画する
スタートアップが事業を成長させるためには、必要なタイミングで適切な資金を確保することが重要です。
そのためには、自社が現在どの成長段階にいるのかを把握し、次のラウンドまでにどのような成果を出す必要があるのかを考える必要があります。
たとえば、シード段階であれば、プロダクトを完成させ、初期顧客を獲得することが重要になるかもしれません。
シリーズAでは、顧客獲得を拡大し、事業モデルの再現性を示すことが求められる場合があります。
シリーズB以降では、組織を拡大しながら売上や利益を大きく伸ばし、企業価値を高めることが重要になります。
このように、次の投資ラウンドを見据えて事業目標を設定することが、資金調達を成功させるうえで重要です。
まとめ
投資ラウンドとは、スタートアップやベンチャー企業が成長段階に応じて行う資金調達を区分する考え方です。一般的には、プレシード、シード、シリーズA、シリーズB、シリーズCなどと呼ばれます。
創業初期のプレシードやシードでは、事業アイデアの具体化やプロダクト開発、市場調査などが主な目的となります。シリーズAでは事業モデルの確立や顧客獲得、シリーズBでは事業規模の拡大、シリーズC以降では海外展開やM&Aなど、より大規模な成長投資が行われるケースがあります。
ただし、投資ラウンドには法律上の明確な定義があるわけではなく、企業によって成長段階や調達額、資金使途は異なります。そのため、「シリーズAだからこの程度の企業」と単純に判断することはできません。
また、投資ラウンドを重ねて株式による資金調達を行うと、新株発行による希薄化が発生する可能性があります。創業者や既存株主にとっては、持株比率が低下することになるため、調達額だけでなく企業価値や株式の発行条件についても慎重に検討する必要があります。
スタートアップにとって重要なのは、現在の成長段階に合った資金を調達し、その資金を事業成長につなげることです。投資家を選ぶ際にも、調達額だけではなく、業界知識や経営支援、人脈など、自社の成長にどのような価値を提供してくれるのかを確認することが大切です。
投資ラウンドの仕組みを正しく理解しておけば、自社が今どの段階にいるのか、次にどの程度の資金が必要なのか、どのような投資家と組むべきなのかを整理しやすくなります。資金調達を検討しているスタートアップは、将来の事業計画まで見据えて投資ラウンドを設計することが重要です。
