資金調達で返済不要の方法とは?補助金や出資などの選択肢と注意点を徹底解説

2026年9月1日

事業を運営していると、設備投資や新規事業、運転資金などのためにまとまった資金が必要になることがあります。資金調達というと銀行融資やビジネスローンを思い浮かべる方も多いですが、借り入れ以外にも「返済不要」の資金を調達する方法があります。

代表的なのが、国や自治体などの補助金・助成金、投資家などから出資を受けるエクイティファイナンスです。これらは一般的な融資とは異なり、原則として調達した資金そのものを返済する必要がありません。経済産業省も、エクイティ・ファイナンスについて、金融機関からの借り入れとは異なり返済義務がない資金調達方法と説明しています。

ただし、「返済不要だから誰でも利用できる」というわけではありません。補助金や助成金には対象となる事業や経費、申請期限などの条件があり、出資を受ける場合には株式の譲渡や経営への影響なども考慮する必要があります。

この記事では、資金調達で返済不要となる主な方法や、それぞれの特徴、メリット・デメリット、利用時の注意点について詳しく解説します。

資金調達で返済不要となる方法はある

資金調達には、大きく分けて「借り入れによる資金調達」と「返済義務を負わない資金調達」があります。

銀行融資やビジネスローンなどは、金融機関から資金を借りる方法です。借り入れた金額に加えて利息を支払い、契約で定められた期間内に返済していく必要があります。たとえば日本政策金融公庫の一般貸付でも、運転資金や設備資金について明確な返済期間が設定されています。

一方、返済不要の資金調達として代表的なのが、補助金・助成金とエクイティファイナンスです。

補助金は、国や自治体などが事業者の取り組みを支援するために、一定の条件のもとで費用の一部を補助する制度です。エクイティファイナンスは、株式を発行するなどして投資家から出資を受ける方法で、通常の借り入れのような返済義務はありません。

ただし、返済不要という言葉だけを見て判断するのは危険です。補助金は原則として対象経費に対する補助であり、事業者がいったん費用を負担してから補助金が交付されるケースもあります。また、要件を満たさなかった場合などには返還が必要になる可能性もあります。

そのため、資金調達方法を選ぶ際は「返済が必要か」だけでなく、「いつ資金を受け取れるのか」「どのような条件があるのか」「自己負担はいくら必要なのか」まで確認することが大切です。

返済不要の資金調達方法1 補助金

返済不要の資金調達方法として、多くの事業者が検討するのが補助金です。

補助金は、国や自治体などが政策目的を実現するために、一定の事業や取り組みに必要な費用の一部を支援する制度です。経済産業省の資料でも、補助金は国や地方公共団体などが事業者の取り組みをサポートするために費用の一部を給付する資金として整理されています。

たとえば、設備投資、生産性向上、新規事業、IT導入、販路開拓など、特定の目的に利用できる補助金があります。

補助金の大きなメリットは、融資とは異なり、採択・交付の条件を満たせば原則として借入金のような返済が不要な点です。金融機関から借り入れた場合のように毎月の元金返済が発生しないため、資金繰りへの負担を抑えやすくなります。

ただし、補助金は申請すれば必ず受け取れるものではありません。制度ごとに対象者や対象事業、補助対象経費、申請期間などが定められており、審査や採択が行われる場合もあります。

また、補助金は「すぐに使える資金」とは限りません。制度によっては、事業を実施して経費を支払った後に実績報告を行い、その内容が確認されてから補助金が交付されるため、事業開始時点では自己資金などを用意しておく必要があります。

返済不要の資金調達方法2 助成金

助成金も、返済不要の資金調達方法の一つです。

助成金は、一定の条件を満たす事業者などに対して支給される資金で、特に雇用や労働環境の改善などを目的とした制度が多くあります。

補助金と助成金は似ていますが、制度によって申請条件や審査方法、対象となる経費などが異なります。そのため、「助成金なら必ず受け取れる」と考えるのではなく、利用したい制度の最新の公募要件や支給条件を確認することが重要です。

助成金を活用できれば、融資のように元金を返済する必要がないため、資金繰りへの負担を軽減できます。特に、従業員の採用や教育、職場環境の整備などを検討している事業者にとっては、有力な選択肢になるでしょう。

一方で、助成金は事業者が自由に使える資金とは限りません。制度ごとに対象となる取り組みが決まっているため、現在予定している事業が支給要件に該当するかを事前に確認する必要があります。

返済不要の資金調達方法3 エクイティファイナンス

エクイティファイナンスは、株式を発行するなどして投資家から出資を受ける資金調達方法です。

銀行融資などのデットファイナンスとは異なり、調達した資金そのものについて返済義務を負わないことが大きな特徴です。経済産業省も、エクイティ・ファイナンスは株式を発行する対価として出資者から資金提供を受ける方法で、金融機関からの借り入れとは異なり返済義務がないとしています。

特に、創業直後の企業やスタートアップ、新規事業を大きく成長させたい企業などで活用されることがあります。

融資の場合は、事業が成長する前から毎月の返済が発生します。一方、エクイティファイナンスでは基本的に元本の返済義務がないため、手元資金を事業成長に集中させやすいというメリットがあります。

ただし、出資を受ける代わりに株式を渡すことになるため、出資者が株主となります。出資比率によっては経営上の意思決定に影響を受ける可能性があり、融資とは異なる形でコストが発生します。

また、会社の価値が上昇した場合には、将来的に株式の持分を手放すことによる経済的な負担が大きくなる可能性もあります。

したがって、エクイティファイナンスは「返済不要だから融資より必ず有利」というものではなく、会社の成長性や経営方針、株主構成などを踏まえて検討する必要があります。

返済不要の資金調達方法4 クラウドファンディング

クラウドファンディングも、事業内容によっては返済不要の資金調達につながる方法です。

クラウドファンディングには複数の方式があります。たとえば、支援者から資金を募って商品やサービスなどを提供する購入型、事業やプロジェクトに対して出資を募る投資型などがあります。

購入型の場合、銀行融資のように借りたお金を元金と利息に分けて返済する仕組みではありません。その代わり、支援者に対して商品やサービスなどのリターンを提供する必要があります。

クラウドファンディングの魅力は、資金調達と同時に商品の認知度向上や顧客獲得につなげられる可能性があることです。新商品や新サービスなど、一般消費者から支持を得られる事業との相性が良いでしょう。

一方で、目標金額を集められる保証はありません。また、支援者へのリターンを用意するため、完全にコストがない資金調達方法ともいえません。

そのため、クラウドファンディングを利用する場合は、必要な資金額だけでなく、リターンの原価や発送費用、プラットフォーム利用料なども含めて収支を計算することが重要です。

返済不要の資金調達と融資は何が違う

返済不要の資金調達と融資の最大の違いは、調達した資金を返済する義務があるかどうかです。

銀行融資やビジネスローンでは、借り入れた金額を返済する必要があります。利息も発生するため、調達額以上の資金を返すことになります。日本政策金融公庫の事業資金でも、融資制度ごとに返済期間が設定されています。

一方、補助金や出資などは、一定の条件を満たせば元本を返済する必要がありません。

ただし、返済不要の資金調達には別のハードルがあります。

補助金の場合は、採択されなければ資金を受け取れない可能性があります。さらに、補助対象となる経費や事業が限定されるため、必要な資金をすべて補助金だけでまかなえるとは限りません。

エクイティファイナンスでは返済は不要ですが、株式を渡すことで会社の所有関係に変化が生じます。

このように、「返済不要」と「負担がない」は同じ意味ではありません。資金調達を検討するときは、返済の有無だけでなく、資金を得るために必要な条件や将来的な負担まで比較することが大切です。

返済不要の資金調達を利用するメリット

返済不要の資金調達には、資金繰りの面で大きなメリットがあります。

まず、融資のような元金返済が発生しないため、毎月のキャッシュアウトを抑えやすくなります。特に創業直後や新規事業の立ち上げ時など、売上が安定していない時期には大きな意味を持ちます。

また、借入金が増えない方法であれば、財務上の負債を増やさずに事業へ資金を投入できる場合があります。

たとえば、補助金を活用して設備投資を行えば、自己負担分を除いて補助対象となる経費の一部を支援してもらえる可能性があります。

さらに、エクイティファイナンスの場合は、返済を前提とせずにまとまった資金を調達できるため、研究開発や新規事業など、成果が出るまでに時間がかかる事業にも活用しやすいでしょう。

返済不要の資金調達にはデメリットもある

返済不要という点だけを見ると魅力的ですが、注意すべきデメリットもあります。

補助金や助成金の場合、利用できる制度や使途が限定されることがあります。また、申請書類の作成や審査、実績報告などの手続きが必要になるケースもあります。

さらに、補助金は申請から交付まで時間がかかることがあるため、「今日申し込んで明日資金を受け取る」という使い方には向いていません。

エクイティファイナンスでは、株式を発行することで出資者が株主になります。経営者が保有する株式の割合が低下すれば、会社に対する経営者の影響力にも変化が生じます。

クラウドファンディングでも、目標金額を集められない可能性や、支援者へのリターンを用意するためのコストが発生する点に注意が必要です。

つまり、返済不要の資金調達は「返済負担をなくせる」というメリットがある一方で、それぞれ異なる条件やコストがあります。

資金調達で返済不要を選ぶときの注意点

返済不要の資金調達を検討するときは、まず「本当に返済不要なのか」を確認しましょう。

補助金や助成金は、条件を満たさなかった場合や不正な申請があった場合などに、返還を求められることがあります。また、制度によって対象経費や申請条件が異なるため、募集要項などを確認せずに事業を開始するのは避けたほうがよいでしょう。

次に確認したいのが、資金を受け取るタイミングです。

たとえば補助金の場合、事業を実施した後に実績報告を行い、補助金が交付されるという流れになることがあります。その場合、補助金を受け取るまでの支払いを自己資金や別の資金調達方法でまかなう必要があります。

また、エクイティファイナンスでは、返済がない代わりに株式を渡すことになります。資金調達後の経営権や株主構成についても十分に検討する必要があります。

すぐに資金が必要なら融資やファクタリングも選択肢

「返済不要」という条件を優先しすぎると、資金調達のタイミングを逃してしまう可能性があります。

たとえば、数日以内に仕入れ代金や外注費などの支払いが必要な場合、補助金の入金を待っている余裕がないケースもあります。

このような場合は、融資やファクタリングなど、資金を早期に確保しやすい方法も含めて検討することが大切です。

融資は返済が必要ですが、必要な金額をまとまって調達し、設備投資や運転資金など幅広い用途に利用できる場合があります。日本政策金融公庫では、小規模事業者や個人事業主向けにさまざまな事業資金の融資制度を用意しています。

ファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却して資金化する方法です。借入金ではないため、融資とは資金調達の仕組みが異なります。ただし、売掛債権の額面全額を受け取れるわけではなく、手数料が発生する点には注意が必要です。

「返済不要か」だけでなく、「いつまでに、いくら必要なのか」を基準に資金調達方法を選ぶことが重要です。

資金調達方法は返済負担とスピードの両面から比較する

資金調達方法を選ぶときは、返済の有無だけで決めるのではなく、資金調達のスピード、調達可能額、利用条件、コスト、経営への影響などを総合的に比較しましょう。

たとえば、時間に余裕があり、対象となる制度が見つかっているのであれば、補助金や助成金を検討する価値があります。

一方で、成長性の高い事業に大きな資金を投入したい場合は、エクイティファイナンスが選択肢になる可能性があります。

短期間で運転資金を確保する必要がある場合には、融資やファクタリングなど、入金までの期間を重視した資金調達方法を検討するほうが適しているケースもあります。

なお、返済負担を抑えたい場合でも、融資制度の中には経営者保証を不要とする制度があります。日本政策金融公庫にも「経営者保証免除特例制度」があり、一定の要件を満たす法人について経営者の個人保証を不要とする仕組みが用意されています。

このように、資金調達では「返済不要」という一つの条件だけで判断せず、自社の状況に合った方法を選択することが重要です。

返済不要の資金調達に関するよくある質問

資金調達で返済不要の方法を探している方からは、補助金や助成金、出資についてさまざまな疑問が寄せられます。

本当に完全に返済不要の資金調達はありますか

一定の条件を満たした補助金や助成金、出資などは、融資のように元本を返済する必要がありません。

ただし、補助金や助成金は制度の条件に違反した場合などに返還が必要になる可能性があります。また、出資の場合も返済は不要ですが、株式を渡すことになるため、経営上の影響や将来的な利益配分などを考慮する必要があります。

補助金と助成金はどちらがおすすめですか

どちらが適しているかは、事業者の状況や利用したい制度によって異なります。

設備投資や販路開拓、新規事業などを予定している場合は対象となる補助金がないか確認し、雇用や労働環境に関する取り組みを予定している場合は助成金を確認するとよいでしょう。

重要なのは、「補助金と助成金のどちらが有利か」ではなく、「自社の取り組みがどの制度の要件に該当するか」を確認することです。

返済不要なら融資より必ずおすすめですか

必ずしもそうとは限りません。

返済不要の資金調達には、申請や審査が必要だったり、資金の使い道が限定されていたりする場合があります。融資であれば返済は必要ですが、事業に必要なタイミングで資金を確保できる可能性があります。

資金が必要な時期や金額、資金使途、返済可能性などを考慮して選択することが大切です。

まとめ

資金調達で返済不要の方法として代表的なのは、補助金、助成金、エクイティファイナンスなどです。補助金や助成金は国や自治体などの制度を利用して事業に必要な費用の一部を支援してもらう方法で、エクイティファイナンスは株式などを通じて投資家から出資を受ける方法です。エクイティファイナンスは借り入れとは異なり、返済義務がないことが特徴です。

ただし、「返済不要=負担がない」というわけではありません。補助金や助成金には申請条件や対象経費があり、入金まで時間がかかる場合もあります。エクイティファイナンスでは、株式を渡すことで株主構成や経営への影響が生じる可能性があります。

そのため、資金調達を検討するときは、返済の有無だけでなく、調達までのスピードや手数料、資金の使い道、将来的な経営への影響などを総合的に比較することが重要です。

すぐに資金が必要な場合は、返済不要の方法だけに絞らず、融資やファクタリングなども含めて検討するとよいでしょう。自社にとって必要な資金を、必要なタイミングで、無理のない条件で確保できる方法を選ぶことが、安定した事業運営につながります。