投資契約書とは?記載される内容や締結前に確認したい重要事項をわかりやすく解説

2026年10月1日

企業が事業を拡大するために外部から資金を調達する場合、銀行融資だけでなく、投資家から出資を受ける方法もあります。特にスタートアップやベンチャー企業では、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルなどから出資を受け、調達した資金を商品開発、人材採用、マーケティング、新規事業などに活用するケースがあります。

投資家から出資を受ける際には、単に資金を受け取れば手続きが完了するわけではありません。投資家と企業との間で、出資条件や株式に関する事項、経営上のルールなどを明確にする必要があります。

そこで重要になるのが「投資契約書」です。

投資契約書は、投資家が企業へ出資する際に、出資条件や当事者間の権利・義務などを定めるための契約書です。契約内容によっては、将来の資金調達や株式の譲渡、会社経営にまで影響する可能性があります。

特に、投資契約書には株式の取得条件だけではなく、表明保証、情報開示、取締役の選任、株式の譲渡制限、優先的な権利など、専門的な内容が盛り込まれることがあります。

そのため、投資を受ける企業側は「出資してもらえる」という点だけを見るのではなく、契約締結後にどのような権利や義務が発生するのかを十分に確認することが大切です。

本記事では、投資契約書の基本的な意味から、作成する目的、記載される主な項目、株主間契約との違い、契約締結までの流れ、企業側が確認すべきポイント、注意したい条項などについて詳しく解説します。

投資契約書とは

投資契約書とは、投資家が企業に対して出資を行う際に、出資条件や投資家と企業の権利・義務などを定める契約書です。

企業が新たに株式を発行し、投資家がその株式を引き受ける場合などに利用されます。

投資契約書では、単純に「いくら出資するのか」だけではなく、どのような株式を取得するのか、企業側にはどのような義務があるのか、投資家にはどのような権利があるのかなどを定めることがあります。

投資後に「そんな条件は聞いていなかった」「この場合はどうするのか」といったトラブルが発生するのを防ぐためにも、契約内容を事前に明確にしておくことが重要です。

投資契約書を作成する目的

投資契約書を作成する大きな目的は、投資に関する当事者間の合意事項を明確にすることです。

投資家から資金を受け取ると、企業と投資家の間には長期的な関係が生じる可能性があります。

特に株式による出資の場合、投資家は株主になるため、単なる資金提供者ではなく、会社の重要な利害関係者になります。

そのため、投資時点で条件を明確にしておかなければ、後から経営方針や株式の扱いについて意見が対立する可能性があります。

投資契約書に具体的な条件を定めておくことで、双方がどのような前提で投資関係を構築するのかを確認できます。

投資契約書が必要になるケース

投資契約書は、企業が外部の投資家から資金を調達する場合に利用されます。

特にスタートアップ企業がエンジェル投資家やベンチャーキャピタルから出資を受ける場合には、投資契約書を締結することがあります。

また、既存企業が新たな投資家から出資を受ける場合にも、投資条件を明確にするために契約書を作成することがあります。

投資金額が大きくなればなるほど、株式や経営に関する条件も複雑になりやすいため、契約内容を詳細に確認することが重要です。

投資契約書に記載される主な内容

投資契約書の内容は案件によって異なります。

企業の規模、投資金額、株式の種類、投資家の属性、資金調達の方法などによって契約条件が変わるためです。

一般的には、出資に関する基本条件のほか、企業側の義務や投資家側の権利、将来の株式の取り扱いなどが定められます。

投資金額と出資条件

まず重要になるのが、投資家がいくら出資するのかという点です。

投資契約書では、投資金額や払込方法、払込期日などを定めることがあります。

また、新たに発行する株式を投資家が取得する場合には、発行する株式数や1株あたりの価格などが問題になります。

企業側は、単純に調達金額だけを見るのではなく、調達金額に対してどの程度の株式を渡すことになるのかを確認する必要があります。

株式の種類と取得条件

投資家が取得する株式についても、契約内容を確認する必要があります。

普通株式だけではなく、種類株式などを利用するケースもあります。

種類株式には、議決権や配当、残余財産の分配などについて、普通株式とは異なる内容を設定できるものがあります。

どのような株式を投資家へ発行するのかによって、将来的な会社経営や資本政策にも影響する可能性があります。

表明保証とは

投資契約書でよく登場するのが「表明保証」です。

表明保証とは、契約当事者が一定の事項について真実かつ正確であることを表明し、保証するものです。

企業側では、会社の財務状況や法令遵守、重要な契約の有無、訴訟の有無などについて表明保証を求められることがあります。

投資家としては、投資判断を行うために提供された情報が正確であることを確認する必要があります。

企業側は、事実と異なる内容を表明してしまうと、契約違反として問題になる可能性があるため、記載内容を慎重に確認することが重要です。

誓約事項や遵守事項

投資契約書では、契約締結後に企業が守るべき事項を定める場合があります。

たとえば、一定の重要な経営判断を行う際に投資家への通知や承諾を必要とする条項などです。

こうした条項が設定されている場合、経営者がこれまで自由に決定できた事項について、投資家との協議や承諾が必要になる可能性があります。

そのため、企業側は契約締結後の経営にどのような制約が生じるのかを確認する必要があります。

情報開示に関する条項

投資家は、自分が出資した企業の経営状況を把握する必要があります。

そのため、投資契約書に情報開示に関する条項を設定することがあります。

たとえば、決算情報や事業計画、資金繰りなどについて、一定の頻度で報告することを企業側に求めるケースがあります。

情報開示義務がどの程度設定されるのかは、契約締結前に確認しておきましょう。

重要事項の通知や承諾

投資家によっては、会社にとって重要な事項について、事前の通知や承諾を求めることがあります。

たとえば、大規模な借入、新株発行、事業譲渡、合併などが対象になる場合があります。

このような条項がある場合、経営者だけの判断で実施できない事項が増える可能性があります。

投資家から資金を受ける前に、どのような事項に制限が設定されるのかを確認することが大切です。

株式の譲渡に関する条項

投資契約書では、株式の譲渡について一定の制限を設ける場合があります。

会社にとって望ましくない第三者へ株式が渡ってしまうと、株主構成や経営に大きな影響が生じる可能性があります。

そのため、株主が株式を第三者へ譲渡する場合に、会社や他の株主の承諾を必要とする条項などが設定されることがあります。

一方で、投資家側にも将来的に株式を売却して投資資金を回収する必要があります。

企業と投資家の双方にとって合理的な条件になっているか確認することが重要です。

投資契約書と株主間契約の違い

投資契約書と混同されやすいものに「株主間契約」があります。

どちらも投資や株式に関連する契約ですが、目的や当事者が異なる場合があります。

投資契約書は、企業と投資家の間で、出資条件や投資に関する権利・義務などを定めるために締結されることがあります。

一方、株主間契約は、複数の株主の間で、会社の経営や株式の取り扱いなどについて合意するために利用されることがあります。

実際の契約では、投資契約書と株主間契約を組み合わせて利用する場合もあります。

投資契約書と定款の関係

投資契約書を理解するうえでは、会社の定款との関係にも注意が必要です。

定款には、会社の組織や株式などに関する基本的なルールが定められています。

一方、投資契約書では、特定の投資家との間で個別の条件を定めることがあります。

契約書だけを確認するのではなく、定款や会社法上のルールとの整合性も確認する必要があります。

投資契約書を締結するまでの流れ

投資契約書を締結するまでには、一般的に複数の段階があります。

まず企業が事業計画や資金調達計画を作成し、投資家へ事業内容を説明します。

投資家が事業内容や成長可能性を評価し、投資を決定する場合には、投資条件について交渉を行います。

投資金額や株式の種類、株価、投資家の権利などについて合意した後、契約書を作成します。

その後、双方が契約内容を確認して締結し、所定の手続きを経て出資金が払い込まれるという流れになります。

実際の流れは案件によって異なるため、契約締結前にスケジュールを確認しておくことが大切です。

投資契約書を作成する際のポイント

投資契約書を作成するときは、将来的な事業展開まで考えて内容を検討することが重要です。

目の前の資金調達を成立させることだけを優先すると、後から経営上の制約が問題になる可能性があります。

たとえば、今後さらに別の投資家から資金調達する予定がある場合には、今回の投資契約によって追加の資金調達が難しくならないか確認する必要があります。

また、株式の持分についても、今回の出資だけではなく将来の資金調達を含めて検討することが重要です。

企業側が投資契約書で確認したいポイント

企業が投資契約書を確認する際には、特に経営への影響を意識する必要があります。

投資家にどのような権利が与えられるのか、どのような事項について承諾が必要になるのか、どの程度の情報を開示する必要があるのかを確認しましょう。

また、株式の譲渡や追加の株式発行などについて制限が設定されていないかも重要です。

契約締結時には問題がないように見えても、数年後に事業規模が拡大したときに条件が負担になることがあります。

そのため、短期的な資金調達だけではなく、中長期的な事業計画を踏まえて契約内容を検討しましょう。

投資家の権利が強すぎないか確認する

投資契約書を確認する際には、投資家に与えられる権利が過度に強くなっていないか確認することも重要です。

投資家が企業の経営を支援してくれることは大きなメリットですが、経営者が事業を進めるうえで過度な制約が発生すると、意思決定のスピードが低下する可能性があります。

どのような事項について投資家の承諾が必要なのか、事前に確認しておきましょう。

株式の希薄化について確認する

投資契約書を検討する際には、株式の希薄化についても確認する必要があります。

新たな株式を発行して投資家へ渡すと、既存株主の持株比率が低下する可能性があります。

さらに、将来的に別の投資家から追加の出資を受ける場合には、既存株主の持分がさらに低下する可能性があります。

そのため、今回の資金調達だけではなく、将来的な資金調達まで含めて資本政策を考えることが重要です。

投資契約書で注意したい優先権

投資契約書では、投資家に一定の優先権を与える条項が設定されることがあります。

たとえば、将来的に新たな株式を発行する場合に、既存投資家が優先的に引き受けられるような条件が設定されることがあります。

こうした条項は投資家にとっては重要な権利ですが、企業側にとっては将来の資金調達方法に影響する可能性があります。

どのような場合に権利が発生するのか、具体的な条件まで確認しておきましょう。

投資契約書で確認したい退出条件

投資家は、最終的に投資した資金からリターンを得ることを目的としています。

そのため、投資契約書では、株式の売却や会社の売却など、将来的な投資家の退出に関する条件が設定される場合があります。

企業側としても、将来的にM&Aや株式譲渡などを行う可能性がある場合には、契約内容がどのように影響するのか確認しておく必要があります。

投資契約書を専門家に確認してもらう理由

投資契約書には、会社法や株式、資本政策などに関する専門的な内容が含まれることがあります。

契約書の意味を十分に理解しないまま締結すると、後から予想していなかった義務や制約が発生する可能性があります。

特に初めて投資を受ける企業の場合には、弁護士などの専門家に契約内容を確認してもらうことが重要です。

専門家に依頼することで、企業側に不利な条件が含まれていないか、条項同士に矛盾がないか、将来的な経営にどのような影響があるのかなどを確認できます。

投資契約書を作るときに避けたいこと

投資契約書を作成するときに避けたいのは、他社の契約書をそのまま流用することです。

インターネット上には投資契約書のひな型が掲載されていることがありますが、企業の状況や投資条件によって必要な条項は異なります。

資本金、株主構成、投資金額、株式の種類、投資家の権利などが異なれば、適切な契約内容も変わります。

ひな型を参考にすること自体は可能ですが、実際の契約では専門家の確認を受けることが望ましいでしょう。

投資契約書の内容を理解してから締結する

投資家から出資を受けられることが決まると、早く資金を受け取りたいという気持ちが強くなるかもしれません。

しかし、契約書への署名を急ぐことは避けるべきです。

一度締結した契約を後から変更することは、相手方の同意が必要になるなど、簡単ではない場合があります。

そのため、分からない条項があればそのままにせず、投資家や専門家へ確認しましょう。

特に、経営権や株式の譲渡、情報開示、追加の資金調達、株式の売却などに関する条項は慎重に確認することが重要です。

投資契約書と資金調達の関係

投資契約書は、資金調達を実行するための重要な書類の一つです。

企業にとって資金調達は、事業成長のための重要な手段ですが、資金を得ることだけを優先してはいけません。

どのような条件で資金を受け取るのか、その条件によって会社の将来にどのような影響があるのかを考える必要があります。

特にスタートアップの場合、創業初期の資本政策が将来的な経営権や資金調達に大きく影響することがあります。

そのため、投資契約書は単なる書類ではなく、会社の将来を左右する重要な契約として扱うことが大切です。

投資契約書を締結する前に整理したいこと

投資契約書を締結する前には、自社の資金調達計画を整理しておきましょう。

今回いくら必要なのか、何に使うのか、将来的に追加の資金調達を行うのか、どの程度の株式を外部へ渡せるのかなどを明確にします。

また、投資家に何を求めるのかも考えておくとよいでしょう。

資金だけを必要としているのか、それとも業界の人脈や経営経験、事業提携先の紹介なども求めているのかによって、適した投資家は変わります。

投資契約書は投資家との信頼関係にも影響する

投資契約書は、単に企業を守るためだけのものではありません。

企業と投資家の双方が安心して関係を築くためのルールでもあります。

契約内容を曖昧にしたまま投資を受けると、後から認識の違いが発生する可能性があります。

一方で、投資前にお互いの権利や義務を明確にしておけば、投資後の関係をスムーズに構築しやすくなります。

特に長期的に事業を成長させていく場合には、投資家との信頼関係が重要になります。

まとめ

投資契約書とは、企業が投資家から出資を受ける際に、出資条件や企業と投資家それぞれの権利・義務などを定める契約書です。

スタートアップやベンチャー企業がエンジェル投資家やベンチャーキャピタルから出資を受ける場合などに利用されることがあります。

投資契約書では、投資金額や株式の取得条件だけではなく、表明保証、情報開示、重要事項の通知・承諾、株式の譲渡制限、将来的な株式の取り扱いなど、さまざまな事項が定められる場合があります。

そのため、企業側は「資金を調達できる」という点だけを見て契約するのではなく、契約締結後にどのような権利や義務が発生するのかを確認することが重要です。

特に注意したいのが、株式と経営権への影響です。

投資家へ株式を発行することで、既存株主の持株比率が低下する可能性があります。また、投資契約書の内容によっては、一定の経営判断について投資家への通知や承諾が必要になる場合もあります。

さらに、将来的に追加の資金調達を行う場合には、今回締結した契約内容が新たな資金調達に影響する可能性もあります。

そのため、投資契約書は現在の資金調達だけではなく、数年後の事業展開まで考慮して内容を確認する必要があります。

・投資金額と払込条件

・発行する株式の種類と株式数

・投資家の持株比率

・表明保証の内容

・情報開示義務

・重要事項に関する通知や承諾

・株式の譲渡制限

・将来的な追加資金調達への影響

・株式の売却や会社売却などの退出条件

などについて、具体的に確認しておくことが大切です。

また、投資契約書は専門的な法律用語が多く含まれることがあります。内容を十分に理解しないまま締結すると、後から経営上の制約や予想外の義務が発生する可能性があります。

特に初めて投資家から出資を受ける企業は、契約締結前に弁護士などの専門家へ相談し、自社にとって不利な条件がないか確認することをおすすめします。

投資家からの出資は、企業にとって事業を成長させるための大きなチャンスになります。

しかし、調達できる金額だけを重視するのではなく、「どのような条件で資金を受けるのか」「どの程度の株式を渡すのか」「投資家にどのような権利が与えられるのか」を把握することが重要です。

投資契約書は、企業と投資家との関係を長期的に左右する重要な書類です。

目先の資金調達を成功させることだけを目的にせず、将来的な資本政策や経営方針まで考えたうえで契約内容を検討しましょう。