株式買取請求権とは?行使できるケースや手続きと価格決定の仕組みを解説
2026年10月1日
株式を保有している株主は、会社の重要な組織再編などに反対した場合、一定の条件を満たすことで会社に対して保有株式を買い取るよう請求できる場合があります。この権利が「株式買取請求権」です。
株式買取請求権は、会社法によって認められている株主の重要な権利の一つです。会社が合併や会社分割、株式交換などを行うことで、株主が望まない形で投資環境が変化する場合に、株主が投資を回収するための手段として機能します。
ただし、単に会社の経営方針に反対しただけで株式を買い取ってもらえるわけではありません。株式買取請求権を行使できる場面や手続き、期限、買取価格の決め方などには一定のルールがあります。
ここでは、株式買取請求権の基本的な意味から、行使できるケース、手続き、価格の決定方法、注意点まで詳しく解説します。
株式買取請求権とは
株式買取請求権とは、会社が一定の組織再編などを行う際に、その内容に反対する株主が会社に対して保有株式を公正な価格で買い取るよう請求できる権利です。
会社が合併や会社分割などを行う場合、株主の意思にかかわらず会社の事業内容や企業グループ内での位置付け、株式の価値などが変化することがあります。
特に、組織再編によって株主が保有している株式の性質や投資対象が大きく変わる場合、反対する株主が会社から離脱するための手段が必要になります。
そこで会社法では、一定の組織再編などについて、所定の要件を満たした株主に株式買取請求権を認めています。
株式買取請求権を行使すると、株主は会社に対して株式の買い取りを請求できます。
株式買取請求権が認められている理由
株式買取請求権が設けられている大きな理由は、会社の意思決定によって少数株主が不利益を受けることを防ぐためです。
株式会社では、株主総会の決議によって重要な事項を決定できます。そのため、すべての株主が会社の組織再編などに賛成しているとは限りません。
たとえば、会社が合併を決定した場合、多数の株主が賛成していれば手続きを進められる一方、反対している少数株主も決定に拘束されることになります。
このような場合に、反対株主が株式を手放して投資を回収できるようにする仕組みが株式買取請求権です。
つまり、株式買取請求権は、会社の組織再編を円滑に進めることと、反対する株主を保護することのバランスを取るための制度といえます。
株式買取請求権を行使できる主なケース
株式買取請求権は、法律で定められた一定のケースで認められます。
代表的なものとして、合併、会社分割、株式交換、株式移転などの組織再編があります。
また、事業譲渡など、会社の事業に重大な影響を与える行為についても、一定の要件を満たせば株式買取請求権を行使できる場合があります。
ただし、具体的な要件は会社の形態や行為の種類によって異なります。
そのため、「会社の重要な決定に反対したから株式買取請求権を行使できる」と単純に考えることはできません。
合併に反対する株主の株式買取請求権
会社が合併を行う場合、一定の要件を満たす反対株主には株式買取請求権が認められます。
合併によって会社が消滅したり、存続会社との関係が変わったりすることで、株主の投資環境が大きく変化する可能性があります。
そこで、合併に反対する株主について、一定の条件のもとで会社に株式を買い取ってもらうことが認められています。
合併に反対している場合でも、法律上必要となる手続きを行わなければ株式買取請求権を適切に行使できない可能性があるため注意が必要です。
会社分割における株式買取請求権
会社分割とは、会社の事業に関する権利義務の全部または一部を別の会社へ承継させる組織再編です。
会社分割によって事業構成が大きく変わると、株主にとって会社への投資内容が実質的に変化する場合があります。
このような場合にも、一定の要件を満たす反対株主には株式買取請求権が認められます。
ただし、吸収分割と新設分割では手続きや株式買取請求権の取り扱いが異なる場合があります。
株式交換や株式移転における株式買取請求権
株式交換や株式移転も、会社法上の組織再編に該当します。
株式交換では、ある会社の株式を別の会社が取得することで、完全親子会社関係を形成します。
株式移転では、新たに設立する会社を親会社として、その会社の完全子会社となる形で組織再編を行います。
こうした手続きに反対する株主についても、法律上の要件を満たす場合には株式買取請求権を行使できることがあります。
事業譲渡と株式買取請求権
会社が重要な事業を他社へ譲渡する場合にも、一定の要件のもとで株主の株式買取請求権が問題となります。
事業譲渡は、会社そのものを売却する取引ではなく、会社が保有する事業を他社へ譲渡する取引です。
そのため、重要な事業が会社から切り離されることで、株主にとって投資対象としての会社の価値や事業内容が大きく変わる可能性があります。
ただし、すべての事業譲渡で株式買取請求権が認められるわけではありません。
会社法上の要件を満たすかどうかを確認する必要があります。
株式買取請求権を行使できる株主
株式買取請求権を行使できるのは、法律上の要件を満たした株主です。
一般的には、対象となる組織再編などに反対する意思を示したうえで、一定の手続きを行う必要があります。
また、株主総会における議決権の有無や、株主総会に先立って反対の意思を会社へ通知しているかなどが問題となる場合があります。
そのため、対象となる会社の定款や株主総会招集通知、会社法上の手続きを確認することが重要です。
株式買取請求権を行使するための手続き
株式買取請求権を行使する場合には、決められた手続きに従う必要があります。
基本的には、組織再編などに反対する意思を明確にし、株式買取請求権を行使する旨を会社へ通知することになります。
ただし、手続きは対象となる行為によって異なります。
特に重要なのが「期限」です。
株式買取請求権には行使期間が定められているため、期限を過ぎると権利を行使できなくなる可能性があります。
株主総会の開催日や組織再編の効力発生日などを確認し、会社から送付される資料をもとに手続きを進めることが重要です。
株式買取請求権の行使には期限がある
株式買取請求権で特に注意したいのが、請求できる期間です。
会社法では、対象となる組織再編などに応じて、株主が会社に対して買取請求を行える期間が定められています。
期限を過ぎてしまうと、株式を買い取ってもらう権利を失う可能性があります。
そのため、株主総会の案内や組織再編に関する通知を受け取った場合には、内容を確認したうえで、早めに専門家などへ相談することが大切です。
株式買取請求権における買取価格
株式買取請求権を行使した場合、株式をいくらで買い取ってもらえるのかが重要な問題になります。
会社と株主との間で買取価格について合意できれば、その価格で決定できます。
一方、価格について合意できない場合には、裁判所に価格決定の申立てを行うことができる制度があります。
株式の価値をどのように評価するかについては、対象会社の財務状況、収益力、将来の事業計画、市場環境など、さまざまな事情が考慮される可能性があります。
そのため、株式買取請求権では、単純に帳簿上の純資産だけを基準として価格が決まるとは限りません。
株式買取請求権の価格はどうやって決まるのか
株式の買取価格について会社と株主の意見が一致しないケースは珍しくありません。
会社側は企業価値を低く評価し、株主側はより高い価格を主張することがあります。
このような場合、企業価値を算定するために、類似会社比較法、DCF法、純資産法などの評価手法が検討されることがあります。
ただし、どの評価方法を採用するのが適切なのかは、会社の事業内容や株式の状況などによって異なります。
非上場会社の場合には市場価格が存在しないため、特に株式価値の算定が難しくなることがあります。
非上場会社でも株式買取請求権は利用できる
株式買取請求権は、上場会社だけに認められている制度ではありません。
非上場会社についても、会社法上の要件を満たす場合には株式買取請求権を行使できることがあります。
むしろ非上場会社では、株式を自由に市場で売却することが難しいため、株主にとって株式買取請求権が重要な意味を持つ場合があります。
特に、M&Aや組織再編などによって会社の経営方針が大きく変わる場合には、少数株主が保有株式を現金化するための手段として検討されることがあります。
株式買取請求権とM&Aの関係
株式買取請求権は、M&Aと深く関係する制度です。
M&Aでは、合併、会社分割、株式交換など、会社法上の組織再編手法が利用されることがあります。
こうした取引では、会社の支配関係や事業内容が変化するため、すべての株主が取引に賛成するとは限りません。
特に少数株主にとっては、自分の意思に反して会社の経営環境が変わる可能性があります。
株式買取請求権は、このような場合に反対株主が会社から退出するための仕組みとして機能します。
M&Aを実施する会社側にとっても、反対株主の権利を適切に取り扱うことは重要です。
株式買取請求権と株式売渡請求の違い
株式買取請求権と混同されやすい制度に「株式売渡請求」があります。
株式買取請求権は、一定の要件を満たした株主が会社に対して株式を買い取るよう請求する制度です。
一方、株式売渡請求は、一定の要件のもとで会社の支配株主などが少数株主に対して株式を売り渡すよう請求できる制度です。
両者は株式の売買を伴う点では共通していますが、制度の目的や利用主体が異なります。
株式買取請求権は、主として会社の重要な意思決定に反対する株主を保護するための制度である点が大きな違いです。
株式買取請求権を利用するメリット
株式買取請求権の大きなメリットは、会社の組織再編などに反対する株主が、会社から退出するための機会を確保できることです。
特に非上場会社では、株式を第三者へ自由に売却できない場合があります。
そのような状況で会社の経営方針や組織構造が大きく変われば、株主は保有株式を売却することが難しくなる可能性があります。
株式買取請求権を利用できれば、法律上の手続きに従って会社に買い取りを求めることができます。
また、買取価格について会社と合意できない場合に、裁判所による価格決定を求められる仕組みがあることも重要です。
株式買取請求権を利用する際の注意点
株式買取請求権を利用する際には、まず自分が法律上の要件を満たしているか確認する必要があります。
また、行使期限を過ぎないように注意することも重要です。
さらに、会社が提示した買取価格に納得できない場合には、価格交渉や裁判所への申立てなどを検討することになります。
株式の価値を適切に評価するためには、財務諸表や事業計画などを分析する必要がある場合もあります。
特に非上場会社の株式では、市場価格がないため、企業価値の算定が複雑になることがあります。
そのため、金額が大きい場合や会社側と価格について対立している場合には、弁護士、公認会計士、税理士などの専門家へ相談することが重要です。
株式買取請求権を行使する前に確認したいポイント
株式買取請求権を行使する前には、まず会社から届いた組織再編に関する資料を確認しましょう。
そのうえで、どのような取引が予定されているのか、自分が反対株主としてどのような手続きを行う必要があるのかを整理します。
次に、株式の現在価値についても確認しておくことが重要です。
会社が提示する価格だけを見るのではなく、会社の財務内容や収益力などから、株式価値がどの程度になるのかを検討します。
また、株式買取請求権を行使した場合の税務上の取り扱いについても確認しておく必要があります。
株式の売却によって譲渡所得などが発生する可能性があるため、実際に受け取れる金額を考える際には税金も考慮しましょう。
株式買取請求権は専門家への相談も重要
株式買取請求権は会社法に基づく制度であり、行使要件や期限、価格決定などについて専門的な知識が必要になります。
特に、M&Aや組織再編の規模が大きい場合、株式価値が高額になる場合、会社と株主の間で意見が対立している場合には、自己判断だけで手続きを進めることは避けたほうがよいでしょう。
弁護士に相談すれば、株式買取請求権を行使できるかどうかや、具体的な手続きについて確認できます。
また、公認会計士や税理士などに相談することで、株式価値の評価や税務上の影響について検討することもできます。
まとめ
株式買取請求権とは、会社が合併や会社分割、株式交換などの一定の組織再編を行う場合に、一定の要件を満たす反対株主が会社に対して保有株式を買い取るよう請求できる権利です。
会社の重要な意思決定に反対する株主を保護することが制度の重要な目的であり、特に非上場会社など株式を自由に売却することが難しいケースでは重要な意味を持ちます。
ただし、株式買取請求権は、会社の経営方針に反対すればいつでも行使できるわけではありません。対象となる取引、株主の立場、反対の意思表示、請求手続きなどについて会社法上の要件を満たす必要があります。
また、株式の買取価格について会社と合意できない場合には、裁判所に価格決定を申し立てることができる場合があります。
株式買取請求権を利用する際には、行使期限を確認したうえで、株式価値や税務上の影響なども含めて慎重に判断することが大切です。特にM&Aや組織再編に伴う株式買取請求では、金額や手続きが複雑になることもあるため、必要に応じて法律や会計、税務の専門家へ相談しましょう。
